物語で知る福祉

感情ってどうやって表現すればよかったんだっけ?

なんだかわかりにくい福祉のことを物語にしてお届けします。

バイスティックの7原則を1つずつ物語にしていきます。

今回は『意図的な感情表現の原則』についてです。

福祉を学ばれている学生や福祉職として働きはじめたばかりの人などの参考になれば幸いです。

 

ではどうぞ!

 

 

ゲームが友達

「あぁーダルいな…」
「ゲームでもしよ…」

もう自分の部屋に引きこもりはじめてかれこれ5年が経った。

ぼくの父親は医者をしていて、ものすごく厳しく厳格だ。
当然のように僕にも医者になることを強いてきて、家でも勉強ばかりさせられてきた。
しかし中学、高校と受験に失敗。
公立の高校には入ったものの父親は認めなかった。
学校生活も楽しむことが出来ず、ついには不登校になった。
学校に通えなくなって最初は父親は毎日のように激怒していたが、1年も経過すると諦めたのか、何も言ってこなくなった。
母親は何もすることがないだろうからと今までほとんどしてこなかったゲームを買い与えてくれた。
それから母親に言えば大抵のモノは買ってくれる。

それから毎日ようにゲームをする日々…。

 

 

来訪者

コンコンコン…

ドアをノックするなんて珍しい。
最近は母親も食事をドアの外にソッと置いていくだけでノックをすることも稀だった。
するとドアの外で母親の声ではない主がぼくの名前を呼んでいた。

「わたし、ソーシャルワーカーの末継と言います!」
「今日は挨拶だけと思って来たので、もう帰りますが今度はお顔を見せてくれると嬉しいです!」

母親よりは若い女性の声で活溌で明るい様子が伝わってきた。

よくわからないが両親がどこかに依頼したのだろうか?
まぁどうせ両親と一緒ですぐに諦めるだろうとそう思っていた。

しかし、彼女はそれからほぼ毎日のようにぼくの部屋を訪ねてきた。

「こんにちは! 末継です! 今日は良い天気で気持ちいいですよ!」

彼女はいつも他愛のない話をしては帰っていった。
何も返事をしていないのによくあれだけ話せるものだと感心さえした。

あまりにも毎日のように来るものだから返事をしてしまった。
「ぁ…ぁぃ」
普段全く声を出さない生活をしているせいでかすれて声がほとんど出なかった。

「わーはじめて話してくれましたね!嬉しい!」
「ありがとうございます!」

それでも彼女はそう言ってくれた。

 

それから彼女とは色々と話すようになった。

ある日彼女から一緒に外に出てみませんかとお誘いがあった。
見せたい景色があるからと。

ちょっと考えさせてほしいと伝えたが、行ってもいいかなという気持ちになっていた。

 

 

嬉しいという感情

夕方に彼女は部屋まで来た。

「それじゃあ行きましょっか」

ぼくは部屋の扉を開けるのを少し躊躇った。
この扉を開けてしまったら色々なことが変わってしまいそうで怖かった。

「大丈夫ですよ。私がついてますから」

ガチャ…

「わぁ、はじめましてーでいいのかな?ずっと話してたからはじめてって感じもしませんね」

彼女は微笑んでいた。

 

自宅からどれくらい歩いただろうか?30分くらいか?
山道のようなところに入ってきた。

「家の近くにこんな山があるの知りませんでした」

「ふふふ、小さい山なんですけどね」
「ちょっと登ったところに素敵な場所があるので楽しみにしてください」

さらに10分くらい進むと急に視界が開ける場所に出た。
そこからはぼくが住んでいる街が見渡せた。
ちょうと日が沈んでいく頃で夕日がすごくキレイだった。

「素敵な場所でしょ?」
「私この景色が好きで一人でよく来るんです」
「生きていると色々あるけど、ここで景色を見ていると些細なことだなーってどうでもよく思えるんです」

少し強い風が吹いた。
その風はぼくの心のモヤモヤを洗い流してくれるようだった。
清々しい気持ちだった。
ぼくは泣いていた。

この感情は何て言うのだったか。
久しぶりに感情が湧いて思い出せない。
あぁーそうだ『嬉しい』だ。

 

 

解説

物語では主人公の男の子が両親による抑圧や引きこもり生活によって感情を失っていました。

ソーシャルワーカーの末継さんはまずは彼に心を開いてもらうため明るく肯定的であることに努め、あなたの味方であるというメッセージを送り続けていました。

『意図的な感情表現の原則』とは、クライエントに感情表現の自由を認めるということです。

クライエントの中には抑圧や環境から自由に感情表現をすることを奪われていることもあります。

支援者としてはまず感情を取り戻してあげることが大事で、そのために支援者も感情表現を工夫、コントロールしていくことが求められます。

お仕事のご依頼を受け付けております。

取材・執筆・相談・写真撮影・広告掲載など

お仕事のご依頼を受け付けております。

 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です