生活保護分野で働いているソーシャルワーカー、ケースワーカーであれば噂で聞いたことがあるかもしれません。
福祉事務所のケースワーカーの業務の外注化という噂です。
国会内でも検討されているのではないかという話もあったりしましたが、今回明確に全国救護施設協議会が毎年行っている、全国救護施設研究協議大会において、救護施設が福祉事務所のケースワーク機能の一部を担っていくとの方向性が示されました。
その内容が福祉新聞にも掲載されました。

今回はこのケースワーカーの業務の外注化によって起こるであろうメリット、デメリットについて考察していきます。
Contents
本当に外注化されるのか
何の話し合いや検討もなく、こういう話が出るとは考えにくいので、もうすでに国側とはそういう方向性で合意を得ているものと思われます。
救護施設が現在福祉事務所で行っている業務の一部を担っていくことは時間の問題でしょう。
救護施設以外の施設やその他NPO法人や民間に外注化するかどうかはまだわかりませんが、救護施設への外注化でうまくいけば、そういうことも検討される可能性は十分にあります。
どういう業務が外注化されるのか
福祉新聞には
まずは、救護施設が「緊急一時入所」「アセスメント」(一部省略)その上で、本来福祉事務所が担う、生活困窮者などに対する支援方針の策定や住まう場の検討といった、ケースワーク機能への一部参画を提案した。
とあります。
今までもDV被害者や被災者等を緊急的に福祉事務所からの依頼で一時入所(ショートステイ)を受け入れてきました。
緊急一時入所を受け入れる際には最低限の健康診断やアセスメントも行ってきていますので、これも今まで行ってきたことです。
今回示されたのは、さらにこの先の延長の対応も救護施設で担おうということだと考えます
。
例えば、DV被害者であれば簡単に家に帰すわけにはいきません。
しかし、現状は救護施設の一時入所では最長1ヶ月しか利用することしか出来ず、その1ヶ月の間に福祉事務所に今後どうしていくのかを考えてもらっているのです。
今後はDV被害者を緊急一時入所で受け入れ、1ヶ月の間に今後の方向性、支援方法なども救護施設で検討。
一緒に新しいアパートを探す、救護施設入所に切り替える、もしくは他施設入所など考えられると思います。
また生活困窮者自立支援法についても言及されており、現在ほとんどの救護施設では生活困窮者自立支援法の就労訓練事業を行っていますが、今後は自立相談支援事業も多くの救護施設が担っていくものと思われます。
それに加え、今回のケースワーク機能を救護施設で実施することで
困窮者からの相談を受け付け、場合によっては生活保護申請し、その後の支援も継続的に救護施設で行っていく、ワンストップなサービスの提供が可能になってくるでしょう。
外注化によるメリット
救護施設が福祉事務所のケースワーク機能を担っていくことによるメリットはいくつかあります。
福祉事務所のケースワーカーの業務軽減
福祉事務所のケースワーカーの業務は激務であり、大変であるというのは周知の事実であると思います。
ケースワーカーの業務を外注化していくことで、業務の軽減を図ることは可能だと思われますが、どのように制度設計・運用していくのかがしっかりしていないと余計な混乱や業務の発生が起きる可能性はあります。
しかし現状は水際作戦を実施している自治体も実在し、福祉事務所はパンク状態ですから、業務改善は積極的に行っていくべきでしょう。
救護施設が主体的に動ける
救護施設はあくまで福祉事務所の下請け的存在であると筆者は認識しています。
最終的な責任は福祉事務所が取りますし(実際はそうでもないことも多いですけど)重大な決定は福祉事務所に判断を仰ぐのが鉄則です。
実施主体は福祉事務所ですから。
しかし今回、ケースワーク機能の一部を救護施設が担っていくことで福祉事務所と救護施設はほぼ対等な関係になっていくのではと思います。
このことにより救護施設がより主体的な動き、働きが可能になっていくのではと考えます。
直接相談を受け付けられるようになるか
救護施設は措置施設なので、救護施設に直接「入所したいんですが」と相談をされても、「まずは福祉事務所に相談してください」とお返事することしか出来ませんでした。
生活困窮者自立支援法の自立相談支援事業を行っているかどうかによっても変わってはきますが、今後はこのあたりも変わってくるのではと思います。
外注化によりデメリット
メリットがあればデメリットも存在しますよと。
基本的にはこの方向性は筆者は賛成ですが、デメリットをどうしていくのかも並行して考えていかなければ、絵に描いた餅になりかねません。
救護施設もマンパワーが足りていない
以前の救護施設シリーズでもお伝えしましたが、救護施設の設置基準は低く、現状でも人手が足りていない状態です。

そこでさらに業務を上乗せするのですから、このあたりも考えてもらわなければ現場はたまったもんじゃありません。
混乱が生じる
ケースワークの一部を担うということですが、線引きをしっかりしておかなければ現場は混乱するでしょう。
どこまで救護施設の判断で、どこからが福祉事務所が判断するのか。
制度設計・運用をどうしていくのかしっかり決めていってほしいものです。
外注化される業務は拡大されるか
おそらくは今後も福祉事務所の業務の外注化は進んでいくのではないかと筆者は見ています。
外注化が進むことでおそらく様々な弊害は出てくるでしょう。
どこに外注化をしていくのかは冷静に判断をしてもらいたいものです。
まとめ
福祉事務所のケースワーカーの増員はおそらく難しいでしょう・・・。
今後外注化の流れはおそらく止まりません。
まだまだ何も決まっていない状態ですが、良い方向に向かっていくことを期待します。
福祉事務所の業務の外注化は2003年に発行された「救護施設との出会い」でも語られています。
筆者はこの本の先見の明に驚かされています。
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