制度では解決が難しい問題のひとつとして住宅の問題があります。
今回は住宅問題シリーズとして、住宅を借りることの難しさに迫っていきます。
住宅を借りることが難しい人たち
普段私達は何気なく家に住んでいますが、実は住宅を借りるということには様々なハードル(バリア)が存在します。
まずどういった人たちが住宅を借りることが難しいのか見ていきましょう。
住宅を借りるのが難しい人たち
- 生活保護受給者
- 低所得者
- 障害者(身体・知的・精神・発達)
- 高齢者
- 母子(父子)世帯
- 身寄りのない人
主に上記の人たちでしょう。
何故借りることが難しいのか細かく見ていきます。
生活保護受給者
かなり地域差があるものと思います。
最近は不動産屋が生活保護受給者向けの賃貸を全面に押し出しているところも見かけます。
改善傾向にはあると思われますが、地域によってはなかなか借りることが難しく、救護施設等の施設から出ることが難しいという話も聞きます。
生活保護受給者が住宅を借りることが難しい理由は大きく分けて2つあります。
- 原則として住宅扶助の範囲に納まるものでなければいけない
- 大家さんの無理解
①に関しては生活保護の中には家賃に当てるためのお金として住宅扶助というものが支給されます。
特例として住宅扶助を超える家賃の賃貸に住むことが認められる場合もありますが、原則として住宅扶助の範囲に納まる家賃の賃貸に住むことが求められます。
地域によっては住宅扶助の金額に納まる家賃の賃貸が少ないこともありますので、そもそもの絶対数が少ないということがあります。
②に関しては行政や生活保護に関わる支援者たちが積極的に啓発活動をしていかなければいけないのだと思いますが、少なからず偏見や無理解が存在します。
大家さんの不安としては
- 働いていない人なんてろくな人じゃないんじゃないだろうか
- 家賃が払えなくなって夜逃げされるんじゃないだろうか
そんなところでしょうか。
その不安もわかりますが、解決策はあります。
◎働いていないのはろくな人じゃないのか?
まず働けない理由にはそれぞれあり、働けるのに働いていないという人は多くはありません。
日本ではよくスティグマと呼ばれますが、生活保護を受けることを恥だと捉える文化が残念ながら存在します。
文化から読み解くに恥をかいてまでわざと働かずに生活保護を受ける人は多くはないと言えます。
普通の人のように見えても働けない理由はそれぞれあるものです。
また生活保護受給者には必ず福祉事務所(行政)のケースワーカーが担当としてついています。
それ以外にも何らかのサービスを利用して、支援者がついている場合が多くあります。
何かあった時のためにケースワーカーや支援者と繋がっておくことでリスクを抑えることが可能です。
またこれは支援者側も不動産業者や大家さんと繋がる努力をしなければいけないと言えます。
◎家賃が払えなくて夜逃げされるんじゃないかという不安
生活保護には代理納付という制度があります。
確かに住宅扶助費を生活保護受給者が家賃に充てず、使い込んでしまい家賃が払えないという状況はあり得ます。
代理納付はそれを防ぐために、家賃扶助費を生活保護受給者には渡さず、行政から直接大家さんに支払いをするというものです。
心配なのであれば一度福祉事務所に相談をしてみることをおすすめします。
障害者(身体・知的・精神・発達)
障害があることで住宅を借りることが難しい理由は様々あります。
◎身体障害の場合
車椅子を常用されている方であれば、段差等があると生活することが難しいことがあります。
また車椅子が入れないことから手を洗ったり、料理をしたりすることも難しいです。
県営や市営の住宅では車椅子の方向けの部屋を用意していることがあります。
- 段差がなくフラット
- トイレが車椅子でも入れるように広い
- 浴槽が掘りごたつのように掘ったところにハマっている
- 洗面所やキッチンなどの下部に車椅子が入れるスペースがある
- 洗面所の鏡が下向き
- 手すりがついている
- 玄関のドアが引き戸
などの配慮がされています。
しかし県営・市営の住宅は抽選であることがほとんどなので抽選に当選しなければならず、必ずしも住めるとは限らないのが難点です。
◎知的障害の場合
知的障害があると契約書の内容を理解することも難しい場合があります。
知的障害が重度の場合は支援者がついていることがほとんどだと思われますが、軽度である場合その限りではありません。
契約書の内容を理解していないことから住居者同士のトラブルが発生することも考えられます。
◎精神障害の場合
そもそも精神障害のある方に対して偏見を持つ方も多いのが現実です。
障害をオープンにすると借りれないことがありますので、多くの人は借りる際にオープンにはしていないかもしれません。
◎発達障害の場合
発達障害の特性は様々ありますが、代表的な例としてコミュニケーションが苦手であったり、曖昧な表現が理解できないなどがあります。
そのため住居者同士のトラブルが発生することが考えられます。
発達障害も軽度の場合は支援者がついていないことが十分に考えられます。
身寄りのない人
高齢になってくると特にそうだと思いますが、精神障害がある方も血縁者から縁を切られていることがあり、事例としては少なくありません。
身寄りがいないと保証人や緊急連絡先になってくれる方がいないという問題が発生します。
現状日本では賃貸を借りる際にほぼ必ずといってよいほど保証人を求められます。
保証人になってくれるサービスを提供している保証会社も存在しますが、そこにも大きな問題があります。
この問題はまた長くなりますので別記事で取り上げることとします。
住宅セーフティネット法
これらの問題に対して住宅セーフティネット法というものが2017年からスタートしています。
登録数は増えてはきているものの、実際に機能しているのかは疑問もあります。
2019年5月20日の時点で住宅セーフティネットのシステムに登録されている件数は
641件です。
通常部屋を借りようとするものは不動産屋さんに行くのが普通です。
最初からセーフティネット住宅情報提供システムで調べようとは思わないし、そういう方々のための居住支援サービスを行っている団体もありますが、そこへの相談にも繋がりづらい状況です。
広く周知することが求められています。
まとめ
今回は
- 住居を借りることが難しい人たちがいること
- そして何故難しいのか?
- 解決策はあるのか?
ということについて見てきました。
制度は整備されつつあるもののまだ十分に機能しているとは言えず、借りれない人たちがたくさんいることをまず知ってください。
次回は借りる部屋は見つかったが、保証人・緊急連絡先になってくれる人がいない場合について話をします。
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