現在、厚生労働省の社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会において子どもの支援に関する国家資格の話が持ち上がり、その後「児童虐待から子どもを守る議員の会」と「児童の養護と未来を考える議員連盟」が新たな国家資格「子ども家庭福祉士」の創設について検討をはじめました。
私はこの動きに反対します。
change.org 「子ども家庭福祉士」の国家資格創設に反対します!
その理由は上記URLから詳しく書いてありますが、私の考えもここで記しておきます。
Contents
新たな国家資格を作ったところで解決はしない
新たな国家資格を作ったところで児童虐待はなくならないと私は考えます。
むしろ現場はさらに混乱し、悪化すらしかねないと思います。
児童や家庭に関する専門家を作ることは虐待防止に一躍かうのでは?とお考えの方もいるでしょうから、そのあたりを紐解いていきますね。
専門家はすでに存在する
ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士)が対応すべきことです。
児相のソーシャルワーカーやスクールソーシャルワーカーが連携を取ることが必要です。
しかし、公的な機関では必ずしも有資格者が採用されているとも限らず、異動が多く専門性が育たなかったり、担当が変わることで連携が上手くいかないといったことが生じます。
ソーシャルワーカーはすでに十分な専門性を有しています。
しかし、それを十分に発揮できる環境がないことが問題だと考えます。
スクールソーシャルワーカーも一人でいくつもの学校を担当していたり、まだまだ数が少ない状況です。
積極的にソーシャルワーカーを登用していくべきです。
ソーシャルワークを専門とする資格を増やすことは専門性の低下に繋がる
福祉は確かに様々な領域、分野にわかれています。
障害分野(身体・知的・精神・発達等)、高齢者分野、貧困・生活保護分野など。
働く場所も福祉施設に限らず
学校、病院、法律事務所、刑務所など多岐にわたります。
だからといって分野ごとに資格を分けてしまって良いのでしょうか?
共通するソーシャルワーク技術は同じはずなのに。
例えば医師であれば
内科、外科、耳鼻科、歯科、眼科、小児科、産婦人科など専門とする分野はそれぞれですが
だからといって資格を分けてはいません。
あくまでも医師という国家資格の中で専門性が分かれています。
それは専門とするものに違いはあったとしても医師として身につけなければいけない基礎的な専門技術・知識は共通しているからに他なりません。
ソーシャルワーカーも共通する基礎となる技術や知識があります。
それを資格で分断してしまっては専門性が育たず、費用もよりかかることになると考えます。
資格を増やすということは専門性を低下させる要因になるのです。
資格を増やすことで利用者はさらに混乱する
医師は
医師ということが共通しているからこそ、病院を利用される患者も何科に行ったとしても医師と認識するわけです。
ではソーシャルワーカーはどうでしょう。
国家資格こそ社会福祉士と精神保健福祉士の2つですが、国家資格以外の資格を入れると福祉系資格はたくさん存在します。
利用する立場の人も相談している相手がソーシャルワーカーだと認識していることは稀でしょう。
福祉の仕事を長くされている人であれば「あなたはどういう立場の人ですか?」と利用者から聞かれることも一度や二度ではないはずです。
それほどまでにソーシャルワーカーは認知されておらず、また資格が多岐に渡ることからこちら側も説明に苦慮します。
説明が難しくなると、結局利用者側もよくわからないことになり、ソーシャルワーカーとしての信用は得られません。(個人として信用を得るかどうかはまた別です)
新たな資格を創設することでさらに混乱が大きくなることは目に見えています。
問題解決するためには
資格を作れば児童虐待が解決するなんて大きな間違いです。
悪化する可能性すら危惧します。
ではどうしていけばいいのでしょう。
登用の問題
冒頭でも触れましたが、公的機関において国家資格を有しているソーシャルワーカーが必ずしも配置されているとは限りません。
全く関係のない部署から嫌々異動してきた人だって少なくありません。
やりたくない仕事を嫌々やらされているような人が能力を発揮できるでしょうか?
私には難しいと思います。
児相や福祉事務所においてもソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)の設置義務を設けるべきです。
また別部署への異動がない専属で管理的立場で他職員を指導することが必要だと考えます。
待遇改善
どの現場においても言えることですが、福祉職の報酬は高いとは言えません。
当然報酬が低ければ、それ以上の能力が発揮されることは難しい。
正当な報酬が支払われてこそ最大限その能力を発揮できます。
新たな資格を創設するお金があるなら、待遇改善にもっとお金をかけてください。
資格の統合
これは現実的には難しいのかもしれませんが
医師と同様に国家資格としては1つに絞るべきだと考えます。
その中で専門を分けていけばいいだけの話です。
私自身は社会福祉士と精神保健福祉士両方を持っていますが、一つにまとめるべきだと考えています。
IT化で効率化
福祉業界全体に言えることですが、業務がアナログ過ぎるのです。
アナログの全てを否定するつもりはありませんが、効率化しないことにはただでさえ人手不足なのに、どうしようもありません。
そもそもアナログの方が安全であるというのも幻想です。
一時期児相の情報提供はFAXで行っていることが話題になりました。
FAXだと安全ですか?
番号を間違えれば、全然関係のないところに情報がいってしまう可能性だってあります。
紙の書類は簡単に持ち出せます。
もちろんデータ化・IT化をすれば安全というわけではありませんが、頑なにアナログでやっていく必要性はどこにあるのでしょう?
仕組みや制度を変化させていく
核家族化が進み、急速に課題やニーズは変化しています。
もはや今のままでは対応が難しいのではないでしょうか?
児相という枠組みでよいのか?
今の制度でよいのか?
人員は足りているのか?
常に時代に対応して変化していかなければいけないと思います。
新たな資格を作ったところで、それを活かす仕組みや制度になっていなければ意味はありません。
まとめ
現状のソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)は十分な専門性を持っています。
しかし児童福祉司は必ずしもソーシャルワーカーとは限らず、児相において専門性が確保できていないのが現状かもしれません。
学校においてもスクールソーシャルワーカーを活かして対応すべきです。
新しい資格創設にお金をかけるくらいなら、ソーシャルワーカーが十分に能力を発揮できるよう仕組みや制度をちゃんと整えるべきです。
心愛ちゃんのような悲劇が生まれないために我々ソーシャルワーカーは必ずチカラになれます。
署名に賛同してくれる方はこちらからお願い致します。
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