前回は救護施設とは何なのか?どんな人が入所しているのか?ということをお伝えしました。

今回は救護施設の機能についてや実際どういうことをしているのかについてお伝えしていきます。
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救護施設の4つの機能
救護施設には大きく分けて4つの機能(事業)があります。
- 入所事業
- 一時入所事業
- 居宅生活訓練事業
- 通所事業
の4つです。
ひとつずつそれぞれ解説していきます。
入所事業
そのままですね。もはや解説は不要かと思われますが一応解説。
入所事業は救護施設の根幹となる事業です。生活保護を受けているが、その他様々な事情により地域生活が困難な人を入所させ、まずは生活の安定を図ります。その後訓練等を通して自立、地域移行に繋げていきます。
入所の対象となる人がどんな人たちかは前回お伝えした通りです。
また救護施設は現在の日本では珍しい措置施設でもあります。
なので、入所してくる利用者とは契約をしません。
あくまで役所の決定による措置です。
いまだに措置施設である理由は生活保護施設である性格上と最後のセーフティネットであるということの2つがあります。
どんな人であっても最後のセーフティネットのため排除しないということです。
救護施設で断ってしまうとその人はもう行くところがありません。
つまり待っているのは「死」です。
ただ、果たして本当に最後のセーフティネットとして機能しているのか?という問題はあります。
この問題については次回お伝え出来ればと思います。
一時入所事業
いわゆるショートステイです。
一時入所事業の利用目的には
- 体験入所
- 通所利用者の休息
- 緊急一時入所
の3つがあります。
体験入所
入所に至る前に施設の雰囲気、自分が馴染めるかなど確認してもらうために短い体験入所を実施します。
大体1泊2日とか2泊3日ですね。
雰囲気が合わなければ利用者の方からお断りされることもあります。
通所利用者の休息
通所利用者って何?と思われるかも知れませんが、詳しくは後述致します。
施設に通ってきている利用者という認識で問題ありません。
入院するほどではないが、精神的に不安定になるなどし、地域生活が難しくなった場合など一時的に施設に入ってもらいます。
期間は1週間程度の時もあれば、長ければ1ヶ月になることもあります。
緊急一時入所
これも前回お伝えしましたが、DV被害者や被災者などです。
緊急でその日に入りたいという場合がほとんど(当たり前ですが)なので筆者の施設では緊急一時入所だけ窓口を分けて対応をしています。
電話がかかってきたら状況や本人の障害等を確認、同時に部屋が空いているか確認、施設にケースワーカーと本人に来てもらい面接、面接後は本人には病院で健康診断を受けてもらい、その間に受け入れ可能か協議…といった感じで非常に緊急一時入所の依頼があるとバタバタします。
最近は夏になるとエアコンがなくて、熱中症が…って依頼多いんですよ。何とかしてあげてください。
居宅生活訓練事業
ここからは居宅生活訓練事業の説明になります。
居宅生活訓練事業は、施設と離れた場所に地域に近い環境で地域移行を目指すための訓練を行うというものです。
訓練期間は原則1年。延長で最大2年となっています。
筆者の施設では普通のマンションの1室を借りて行っています。
施設では提供できなかった支援(例えばゴミ出し等)や、施設内ではわからなかった課題が浮き彫りになることも多く、利用者を自立させていくにあたって非常に重要な事業となっています。
通所事業
通所事業は入所事業の定員の半数を上限とし、施設に通所させて、もしくは自宅を訪問して地域での自立を促進する事業です。
具体的には
- 日中の居場所
- 日中活動、作業
- 食事提供
- 服薬管理
- 通院同行
- 金銭管理
- 公的書類の説明、代筆
- 役所同行
- 買物同行
- サービス調整(ヘルパー、訪問看護、その他社会資源の利用申請補助、サービス開始後の連絡・調整)
- 相談支援
- 定期訪問(掃除等)
- 安否確認(電話連絡、訪問)
- 緊急時対応(救急車への同乗等)
- 遺品整理
などです。
これらの支援を筆者の施設では2名でしています。利用者は30〜50名ですが、ある理由によりほとんどの利用者に対して無償でサービスを提供しています。
これが非常に大きな問題、救護施設職員の大きな負担になっています。
この問題についても次回お伝え出来ればと思います。
利用者はどんな生活をおくっているのか?
さて、ここまで救護施設の4つの機能(事業)について説明をしてきましたが、では具体的に入所している利用者はどんな生活をおくっているのか?
ハッキリ言うと救護施設には施設によって対象者も特色も全く違うので一概には言えません。
例えば筆者の施設にはホームレスはほとんどいませんが、大阪になるとホームレスだった利用者も多いと思われます。
あくまでも筆者の施設の場合と思ってお聞きください。
日中活動支援
救護施設によっては半強制で作業をさせているところもありますが、筆者の施設には作業はありません。
その代わり余暇活動として日中活動支援をしております。
主には
- 園芸療法士による園芸クラブ
- 音楽療法士による音楽クラブ
- 作業療法士によるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)
- その他ボランティアや処遇職員による活動
参加するかしないかは利用者に選択権がありますので、何にも参加せず毎日ゴロゴロして過ごすことも可能です。
生活保護を受けているくせに毎日ゴロゴロ過ごしていると聞くと批判も聞こえてきそうですが…。
作業が出来ない方も少なくありませんから、最後のセーフティネットとしては救護施設の中でも最大限に発揮していると言えます。
それに人間には何もしない時期も必要なんですよ。
今まで頑張りすぎたがために心を壊してしまった方も多いですから…。
行事
季節ごとの行事や日帰りレク、宿泊旅行などしています。
これも生活保護のくせにとご批判を受けそうですが、四季を感じてもらったり、利用者間の交流は、人が自分の心を取り戻していくためにも必要です。
在園者自治会
入所利用者の自治会が存在します。
役員も全て利用者が担っており、責任ある立場を体験することができます。
自治会としては話し合いや余暇活動をしていることもあります。
場合によっては署名活動が起こったこともありました。
自立していくために権利と責任を学ぶ良い機会になっています。
その他個別支援
通所事業でもお伝えしたことと同じような内容のこと入所事業においても個別的に支援しています。
どのように支援していくかは毎年個別支援計画を策定し、さらに毎年福祉事務所の担当ケースワーカーに来所いただき担当者会議をしています。
個別支援計画策定後もアセスメントやモニタリングを繰り返し、自立・地域移行を目指していきます。
まとめ
今回は救護施設の機能や実際に入所している利用者がどんな生活をおくっているのかをお伝えしました。
イメージがつきにくいこともあるかもしれません。
疑問、質問等あればお問い合わせ、もしくはTwitterのDMから質問してください。
誠心誠意お答えさせて頂きます。
- 救護施設の機能は「入所事業」「一時入所事業」「居宅生活訓練事業」「通所事業」の4つ
- それぞれの事業を横断的に利用してもらい、利用者を支え、自立を促している
- 救護施設により主な対象者や特色は異なる
- 生活保護だからと締め付けるのではなく、余暇活動にも力を入れている
次回は「救護施設の課題 本当にセーフティネットとして機能しているのか?」
をお送り致します。

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救護施設に入ったら自主退所できないのですか?
けんさんコメントありがとうございます!
措置にはなりますが、出来ないわけではありません。
しかし、明日退所しますとなると難しいかもです。
退所に向けて話し合っていく形にはなろうかと思います。