今回は連載第3回目になります。
過去記事はこちらから↓


今回は救護施設の課題を検証していきます。
救護施設は国民の生存権を守るための存在します。
自分には関係ないとは言わず、お付き合い頂ければ幸いです。
Contents
マンパワーが足りない
救護施設の職員配置基準は5.4人に1人とされています。
このシリーズでお伝えしているように救護施設には現在の制度では支えきれない多様な問題を抱えた方が入所されています。
にも関わらず配置基準はかなり低い。
この配置基準ではまともに利用者を支援、自立させていくのはかなりの困難を極めます。
筆者の施設では配置基準を大幅に超えて職員を配置していますが、それでもギリギリの状態です。
私達がやらなければ、この人たちの命はない!と現場の人間は満身創痍です。
通所事業の措置外利用者が多数存在する
入所事業同様に通所事業利用者も措置になるのですが、措置を受けることが出来ない状態でサービスを継続している利用者が多数存在しています。
つまり無償でサービス提供しています。
ボランティアです。
そんな措置外利用者が定員の倍はいます。
なぜ措置外利用になってしまうのかというと、筆者の地域では生活保護法のサービスを利用しながら、障害者総合支援法の通所系サービス(就労継続支援A型、B型、就労移行支援など)を使うことが原則できません。
※生活保護法と障害者総合支援法のサービス併用については厚生労働省より取り扱いを各自治体に委任されているため、自治体により取り扱いが異なります。
障害者総合支援法の通所系サービスではお金の管理や薬の管理、緊急時の対応などしてくれません。
しかし、通所事業利用者から作業所に通いたいと言われれば、反対するわけにもいきません。
実際に利用に繋がれば、自動的に措置は切れます。
措置は切れても今まで通所事業で行っていたサービスを切ってしまうと生きていけない人がほとんどですので、そのまま措置外(つまりボランティア)で関わっていきます。
これがマンパワーの足りない大きな要因になっています。
対象者が年々重度化している
いくつかの要因はありますが、救護施設の対象となる方の障害や問題が年々重度化しています。
高齢化
救護施設も日本社会同様に高齢化が進んでいます。
他法優先が原則ですが、老人ホームには入れないような人々がたくさんいます。
救護施設は高齢者施設ではありませんので、ほとんどの救護施設では高齢者施設ほど設備が整っていないのが現状です。
このままでは職員の負担はさらに重くなり、利用者にも有益ではないでしょう。
精神科病院の病床数減少
日本では精神科病院の病床を削減し、地域移行を促していく方針をとっています。
しかし現状では精神科病院を退院した方を地域で受け入れる受け皿はまだまだ整備されておらず、その役割を救護施設が担っています。
近年は重度の精神障害者や長期入院されていた方も病院を退院され、救護施設に入所されており、職員の負担が重くなっています。
精神科への長期入院3.9万人削減を目標 厚労相、20年度まで:日本経済新聞 精神科への長期入院3.9万人削減を目標 厚労相、20年度まで:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09H2R_Z00C17A1CR8000/
常に定員オーバー
筆者の施設は定員MAXで運営がギリギリです。なので常に定員以上の利用者を受け入れています。
つまりは空きが出ないと入れない人々がいるのです。
しかし中にはそんな猶予がない方たちもいらっしゃいます。
「他の救護施設をあたってください」としか言いようがないわけですが、最後のセーフティネットとしてそれで良いのか?
たらい回しにされている方もいます。
余裕をもって運営出来る体制を国にも考えてもらいたいものです。
受け入れ拒否することも
部屋が空いていたとしても受け入れを断ることもかなりあります。
理由としては先程重度化してきている話をしましたが、職員に負担がかかり過ぎており疲弊しています。
今以上に困難ケースを抱えることが難しいということがあります。
あとは介護施設に比べ設備が整っていない場合が多いので、身体介護の必要性が大きい方も断ることが多いです。
これも最後のセーフティネットとしてどうなんだ…?と言えます。
認知度が低い
一般の人に知られていないのはもちろん。福祉職の人にもあまり知られていない救護施設。
それどころか生活保護を担っている福祉事務所のケースワーカーすら知らないことも少なくない。
これは由々しき問題です。
措置施設であることに甘んじて今まで宣伝というものを全くしてこなかった救護施設にも問題はありますが、福祉職やケースワーカーにはある程度知っていてもらいたいと思っています。
世の中には救護施設で解決出来るケースはたくさんありますから。
国に必要性を疑問視されている
救護施設は本当にこの国にとって必要なのか?
あなたはどう思いますか?
よく救護施設と比較されるものに「無料低額宿泊所」があります。
無料低額宿泊所とは
無料低額宿泊所(むりょうていがくしゅくはくじょ)は、政府への届出によって設置できる福祉的居住施設。社会福祉法第2条第3項に規定されている第2種社会福祉事業の第8号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」という記述に基づき設置される施設である。サービス形態としては、「宿所の提供のみ」、「宿所と食事を提供」、「宿所と食事に加え入所者への相談対応や就労指導」がある。wikipedia
救護施設じゃなくてもよいのではないか
無料低額宿泊所と比較され、救護施設である必要はないのではないか?とよく言われます。
救護施設には毎年個別支援計画を策定する義務がありますし、個別のケースと向き合い、支援しております。
明確に無料低額宿泊所とは違う。救護施設はなくてはならない施設であると筆者は主張します。
収入の低下
生活保護費は今後減額されていく方向性です。
保護費の減額は救護施設の収入面にもいずれ打撃を受けるのではと思います。
そもそも生活保護に充てる予算を減らすわけですからね。
先程お伝えした救護施設の必要性を疑問視されていることも要因としてはあるかもしれません。
このままでは、救護施設の運営がままならなくなるのではと危惧しています。
生活保護法は廃止されるか?
正直筆者は生活保護法は廃止されてもよいのではないかと考えています。
生活保護法はスティグマが強すぎて、本当に必要なところに行き届いてません。
日本の生活保護の補足率(生活保護基準を下回る経済状態の世帯のうち実際に生活保護を受けている割合)は約1〜3割と言われており、先進国の中では著しく低い状況です。
生活保護法は国民の生存権を守るための制度設計が十分ではないと言えます。
そこで筆者は生活保護法に代わってベーシックインカムが導入される日がくるのではないかと予測します。
ベーシックインカムとは現在ある社会保障を大幅に縮小もしくは全廃し、国民に一定の金額を給付する制度です。
当然生活保護も廃止です。
そうなれば、救護施設も当然廃止ですが、生活保護に関係なく制度の網目から漏れた人々を支援する制度は必ず必要なので、別の法制度として救護施設を規定していく必要があるでしょう。
まとめ
今回は救護施設の課題についてお伝えしてきました。
これらの課題を解決することは日本国民全員に有益であると筆者は考えます。
あなたも一緒に日本の未来を考えていきませんか?
- 様々な理由によりマンパワーが足りていない
- 運営もギリギリ
- 認知度が低い
- 必要性を疑問視されている
- 生活保護法が今後も続くかわからない
次回は「救護施設を活かすにはどうすればよいのか?」をテーマにお送り致します。

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